俺はあいつのことを燐と呼ぶ、けれど、あいつは俺のことを勝呂と呼ぶ。もうそれで呼ばれ慣れているし、いまさらそれ以外の呼びかたをされるのも気持ちがわるいとは思う。ただ―――
「おい燐、俺のなまえよんでみい」
「なんで?」
「ええから」
「―――すぐろ」
「下もや」
「―――りゅうじ」
「なんや、漢字ちゃんと読めとったんやな」
「読めるわ、あほう」
馬鹿にすんなと文句をたれる燐に俺はすっかりにらまれた。
さて燐は気づいているだろうか。自分がいま言ったばかりの言葉がいつもと少し違って聞こえたのを。
「おまえ、いま、京都弁になっとったぞ」
「まじで?」
「イントネーションがな、俺につられとったわ」
そう教えたら、燐は腕を組んでむうとうなった。どうやらさっきの会話を反芻しているらしい。
「まあ、しょうがねえよな」
「ん?」
「だってさ、おまえともうずっと一緒にいるわけだし」
自分の出した答えに納得したように、燐はうんうんとうなずいた。
こんなふうに燐のなかにいる俺を見つけるのは悪くない。
それだけでも俺には十分なのだ。
おまけ:名前をよぶ(勝呂の場合)
(2011.8.21)
▲Text