実家の京都を思い出させるような田舎じみた景色のなかを電車はとろとろ走っていた。窓の外をすぎてゆくのは、水田と畑と、丘と山とで、たいして代わり映えしない。それでも十分に勝呂の郷愁をあおっていた。
視線を落とせば足元にふたつの影が並んでいる。一面の空を朱色に塗った夕日が、勝呂の背後でその日最後の輝きを放っていた。となりに座る燐に目を移すと、燐の背中もきれいなオレンジ色に染まっていた。
各駅停車の電車はほとんど人の降りたあとだった。ひとつひとつ律儀に駅にとまっているけれど、乗ってくる客もいない。最終の特急に乗り遅れたのは自分たちのせいだけれども、こんな調子では宿につくのはいったいいつになるのだろうか。
電車が大きく横にゆれて燐の頭がこっくりと傾いた。
「眠いんか?」
「んーん」
大丈夫と燐は言うけれど、それとは裏腹に目をこすったり、不自然にまばたきを繰り返したり、眠らないよう頑張っているのが見える。
あれだけ歩いて食べて遊びまわれば疲れもでて当然だ。燐が本当に楽しそうにするから勝呂は水をさしたくなくて燐をとめたり落ち着かせたりはしなかった。それが燐をくたくたにさせることになったわけだけれども、それでよかったのだと勝呂は思う。笑ってはしゃぐ燐をとなりでずっと見ていられたのだから。
「ほら、ここのせろ」
「ん」
勝呂が差しだした肩に、燐は言われるまま頭を置いて目を閉じた。そうしてすぐに聞こえはじめた燐の寝息が勝呂の耳をくすぐった。
このままずっとこうしていられたらいい。いつまでも電車がそこにつかなければいいのに。そんなことを思っていたらわけもなく目がじわりと波うって勝呂は少し戸惑った。
こみあげるものを抑えるように瞼を閉じると、勝呂は燐の横顔に頬をよせた。
そのじ10:肩をかす
(2011.08.10)
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